仙台高等裁判所 昭和63年(ラ)10号 決定 1988年3月28日
抗告人 株式会社大東相互銀行
右代表者代表取締役 鈴木邦一
仙台地方裁判所古川支部昭和六二年(ケ)第一六号担保権実行による不動産競売事件について、同裁判所が昭和六三年一月二五日にした売却許可決定に対し、抗告人から執行抗告の申立があったので、当裁判所は次のとおり決定する。
主文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。
理由
一、本件抗告の趣旨は、「原決定を取消し、松井伸太郎に対する売却を不許可とする旨の裁判を求める。」というのであり、その理由は、別紙執行抗告状中の「抗告の理由」欄記載のとおりである。
二、そこで判断するに、本件記録によれば、抗告人は、別紙物件目録記載の不動産(以下「本件物件」という。)について、昭和五八年三月三〇日仙台法務局岩出山出張所受付第一七四九号及び同年五月二四日同出張所受付第二四五一号をもって、原因同年三月二四日分割貸付同日ないし同年五月二四日設定、債権額金一億五〇〇〇万円、利息年七・八パーセント、損害金年一六パーセント、債務者同和総合開発事業協同組合連合会、抵当権者抗告人なる旨の各抵当権設定登記を受けていたこと、抗告人は、昭和六二年一月二一日、原裁判所に対し、本件物件につき担保権実行による不動産競売申立をし、原裁判所は、同月二七日右不動産競売開始決定をし、同月二九日その旨の差押登記を経由したこと、原裁判所書記官は、同年一二月一五日及び同月二一日にわたって、民事執行規則四九条、三六条による期間入札の公告の掲示嘱託及び公告をし、同月一五日、同規則一七三条一項、三七条により、利害関係人らに対し入札期日(入札期間、昭和六三年一月五日から同月一一日まで、開札期日・同月一八日)等の通知をした(ただし、本件記録上、現実に、抗告人に対して右入札期日の通知がなされたか否かは必ずしも明らかでない。)こと、その後、松井伸太郎は、原裁判所に対し、本件物件を入札価額金一一四一万円(なお、最低売却価額は金一一三九万円である。)で買受ける旨の申出をし、原裁判所は、同人を最高価買受申出人と認め、昭和六三年一月二五日同人に対し、本件物件につき右金一一四一万円で売却を許可する旨の決定をしたことが認められる。
右事実によれば、期間入札の公告は適法になされているのであるから、抗告人主張のとおり、抗告人に対する入札期日の通知が欠缺していたとしても、抗告人は、右公告により入札期日を知ることができた筈であり、したがって、抗告人が本件物件を高価で買受ける人を捜して、同人をして入札期日に参加させることも、みずからこれに直接参加することも不可能ではなかったものと認められる。
してみると、抗告人が右入札期日の通知の欠缺によって、抗告人主張のような不利益を被っているものとは到底認め難く、右通知の欠缺の瑕疵は右公告により治癒されたものと考えられるから、右通知の欠缺が直ちに、民事執行法七一条七号にいう「売却の手続に重大な誤りがある」場合に該当するものということはできない。したがって、この点に関する抗告人の右主張は採用することができない。
三、よって、本件抗告は理由がないからこれを棄却し、抗告費用は抗告人に負担させることとして主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 伊藤和男 裁判官 岩井康倶 松本朝光)
<以下省略>